キャズム理論とは?日常業務でどう活かす?【キャズムを超える手法を紹介します】

こんにちは!オタマロです。

「キャズム理論」ってご存知でしょうか?

キャズム理論とは、ジェフリームーア氏が、著書「キャズム」(原題 Crossing the Chasm)の中で提唱した理論です。

導入期には革新的な商品、アイデアが、なかなか世の中に広まっていかない事例は山ほどあります。所謂キャズム(溝)を越えられず、商品、アイデアが大衆化しなかったことが要因の1つとして考えられます。

実際のビジネスだけでなく、自分の主張がなかなか相手にわかって貰えない時、自分と相手の間にあるキャズムを超える必要があります。

今回は、キャズム理論(イノベーター理論)の概要をお伝えし、キャズムを超える方法についてご紹介します。事業展開に活かせるだけでなく、自分の主張を相手に理解させるためにも活かせる考え方です。

ビジネスマン、就活生、副業を考えている方の参考になれば幸いです!

・自分の考えが正しいという確信があるが、相手にわかってもらえず悩んでいる方
・キャズム理論(イノベーター理論)の概要を知りたい方
・事業を考える上で、キャズムの超え方を知りたい方

イノベーター理論の概要について

キャズム理論を理解するためには、まずイノベーター理論から理解する必要があります。

まず、イノベーター理論とは、製品やサービスの市場への普及率を考える上で、ユーザー層は、製品の普及率に合わせて5つ(イノベーター、アーリーアダプターアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガード)に分類されるという考え方です。

それぞれのユーザー層の特徴は以下のとおりです。

イノベーター(革新者)

まず、最初期に製品やサービスを採用するのがイノベーター(革新者)という層です。

イノベーターは新しいものを積極的に導入する好奇心を持っています。
「新しい」ということに価値を感じて、市場にまだ普及していない、コストが高い製品やサービスであっても、そのユーザーの価値観に合致したモノであれば支えてくれます。

割合にして市場全体の約2.5%がこのイノベーター(革新者)であると言われています。100人に3人はただ「新しい」ということに価値を感じているという考え方です。

新しいiPhoneが発売された時、スペックやクチコミを気にせず並ぶ層がこの層です。

アーリーアダプター(初期採用者)

イノベーターほどではありませんが、これから普及するかもしれない製品やサービスにいち取り入れるユーザー層のことをアーリーアダプター(初期採用者)と呼びます。

アーリーアダプターは世間や業界のトレンドに敏感です。常にアンテナを高く張って情報を判断し、これから流行りそうなものを採用します。

世間や業界のオピニオンリーダーやインフルエンサーになりやすい層でもあります。アーリーアダプターはこの後の層に対する影響力も大きく、5つの層の中でもアーリーアダプターの攻略は特に重要だと言われています。

割合にして市場全体の約13.5%がこのアーリーアダプター(初期採用者)であると言われています。100人に14人は主体的に情報を検索、発信する層であるという考え方です。

新しいiPhoneが発売された時、早期に購入しレビューを書いてくれる層がこの層です。

アーリーマジョリティー(前期追随者)

情報感度は比較的高いものの、新しい製品やサービスの採用に慎重なのが、アーリーマジョリティー(前期追随者)という層です。

アーリーマジョリティーはアーリーアダプターの意見に大きく影響を受けるので、アーリーマジョリティーを開拓するためにはアーリーアダプターをきちんと攻略することと、製品やサービスを導入する合理性をきちんと説明できなければなりません。

市場全体の34%程度を占めていると言われています。約3人に1人がこの層であり、市場において一定のボリュームを有する層です。

新しいiPhoneが発売された時、早期レビューを自分で確認をして、自分にとってのメリットがあれば購入するのがこの層です。

レイトマジョリティ(後期追随者)

新しい製品やサービスについては消極的で、なかなか導入しないのがレイトマジョリティ(後期追随者)です。

この層は、多くのユーザーがこの商品やサービスを採用している多数派だと確証を得てから採用するユーザー層です。この層を攻略するためには、まず普及率を高めなければなりません。

アーリーマジョリティーと同様、市場の34%程度を占めていると言われています。

新しいiPhoneが発売された時、周りがiPhoneを持っていることを確認できてから購入する層です。価値は認識しているものの、周りが持っていることを確認して初めて購入する層です。

ラガード(遅滞者)

最後は、ラガードという層です。ラガードは市場の中でも最も保守的な層です。その製品やサービスがただ普及するだけではなく、伝統的、文化的なレベルまでその商品を採用することが一般的にならないと採用しない層です。

ラガードを攻略するためには、すでにその製品、サービスが世間の定番になっていることを訴求し、その次のトレンドとなりそうな新商品よりも安心できることを訴求する必要があります。

ラガードは、市場全体の約16%を占めると言われています。

新しいiPhoneが発売された時、まず買わない層です。ガラケーを使い続けている層です。ガラケーよりもiPhoneが確実に安心できるようになるまで待ち続ける層です。

キャズム理論の概要について

ここからは、いよいよキャズム理論について解説をしていきます。

キャズム理論

 

市場シェアをおさえる=50%以上のシェアをおさえるためには、アーリーマジョリティまでをおさえる必要があります。

イノベーター、アーリアダプターは「初期市場」と呼ばれます。一方、アーリーマジョリティ以降を「メインストリーム」と呼びます。

製品・サービスが市場で「メインストリーム」になるためには、「初期市場」から「メインストリーム」に移る必要があります。

その際、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には、超えなければならない障害(溝・キャズム)があり、それを超えることが市場シェアを取る上で非常に重要であることを示したのが「キャズム理論」です。

「初期市場」だけでなく、「メインストリーム」を制するためには、顧客層を踏まえたアプローチが重要となります。

キャズムを超えられない理由について

キャズムを超えられない具体的な理由はどこにあるのでしょうか?

キャズムが生まれる、「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の特性に注目すると答えがわかります。

「アーリーマジョリティ」は商品・サービスを選ぶ上で、一定の合理性を求めます。商品・サービスが信用できるものであるのか、明確な利益(便益)をうむことができるのか、他の企業が使用しているのか等、「新しさ」以外の価値を訴求していく必要があります。

「アーリーマジョリティ」は言い換えると「賢い消費者」でもあります。

「賢い消費者」に価値を認識させられない商品は「ガジェット」と言われます。「賢い消費者」に価値を認識させられた商品は「コモディティ商品」として、世の中に急速に広がっていくことになります。

キャズムを超える具体的な方法について

キャズムを超えるためには、さまざまな方法があります。ここでは3つの方法、手法についてご紹介します。

①すでに信用力のある企業・プレイヤーと提携する
②アーリーマジョリティの一部を集中的に狙う
③マス告知により急速に認知度を上げる

それぞれ補足をしていきます。

①すでに信用力のある企業・プレイヤーと提携する

製品・サービスに魅力があっても、消費者に「安心」をさせることが難しい場合があります。の時は、すでに信用力のある企業・プレイヤーと提携をすることで、信用力を飛躍的に高めることが出来ます。

ベンチャー企業が大手企業と組む大きな目的の一つが、この信用力を得るためであると言われています。大企業が持つ、ブランド力、安定した保守体制などを製品の魅力に加えることで、大衆への価値を増大させることが出来ます。

②アーリーマジョリティの一部を集中的に狙う

近年、SNSやブログが広がることで、アーリーマジョリティであっても情報発信は容易な時代となりました。アーリーアダプターのみに訴求を期待するのではなく、アーリーマジョリティーの特定の層に訴求することにより、アーリーマジョリティの中でも情報が拡散していくことが期待出来ます。

「アーリーマジョリティーの特定の層」=「自社の強みを最大限訴求できるセグメント」を制圧することで、他のアーリマジョリティーのセグメントにも価値を広げていくことが出来ます。

セグメント分析をより深く知りたい方はこちらも参考にしてみてください。

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③マス告知により急速に認知度を上げる

最後は、力技です。コストがかかりますが、CM告知でブランド認知を広げることにより、大衆にもその魅力を認知させることが出来ます。ペイペイは、利益度外視で市場をおさえるために、大量のCMを投下しています。キャンペーンのお得さもありますが、大量の訴求により、コモディティ化の時間を短縮化することに成功した事例であると言えます。

ただ、この手法は大企業だからこそできるやり方でもあるため、①と組み合わせた展開となります。

キャズム理論を日常業務に落としこんでみる

キャズム理論は、商品・サービスを展開させるうえで活用できる理論でもありますが、日常業務でも活かすことが出来ます。

上司が、イノベーター層であれば、革新的なアイデアを求められます。儲かるかどうかより、革新性が重要視されるので、スピード重視の提案をすべきです。ただ、このタイプは数%しかいないので、100人いて1人あたるかどうかというレベルです。

上司がアーリーアダプターの場合、その特性を最大限活用しましょう。ある程度、粗い企画でもどんどん進めることが出来ます。関係部署との交渉などを依頼すると効果大です。一方、リスクが大きすぎる企画もどんどん進んでしまう可能性があるので、そこの見極めは自分でおさえておく必要があります。

上司がアーリーマジョリティの場合、しっかりと企画趣旨、リスク、収益性を説明する必要があります。合理的根拠を明確に示すことで、強力に企画を推進させることが出来ます。また、社内では先見性があるため、先行者利益を得やすい上司でもあります。

上司が、レイトマジョリティ、もしくはラガードの場合、新規企画の提案は控えるべきです。相当の実績、調査、先行事例を説明する必要があるためです。新しい企画を通すというよりは、先行事例の報告等をメインに仕事を進めるべきです。新規企画はコストパフォーマンスが悪くなる(企画が通りにくく、無駄な作業が増える)ことから、仕事のやり方を変える必要があります。現状維持を好みますが、現状の課題を把握していることも多いため、まずは現状分析をしっかり説明することをオススメします。

現状分析、外部環境の把握についてはこちらをご参照ください。

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最後に、上司がどの層の人間であるのかを判別する方法をご紹介します。

何でも良いので、社外のサービス・商品の発売からどれくらいの期間で購入に至ったかを把握しておくことで、どの層にいるかを判別出来ます。

私は、よくiPhoneで判断するようにしています。数世代前のiPhoneを利用している上司には、かなり丁寧に説明することを心がけるようにしています。

出世するためのコツはこちらもご参考にしてみてください。

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キャズム理論のまとめ

今回は、キャズム理論について解説をさせていただきました。

イノベーター理論が基本になる理論ではありますが、実際に商品・サービスを展開する上では非常に重要な視点、考え方になります。

また、日常業務を進める上でも、キャズム理論、イノベーター理論を活用することが出来ます。知っているのといないのでは、仕事の進め方が大きく変わってきます。

キャズム理論だけでなく、さまざまなマーケティングノウハウを知っておくことは、自分の仕事を楽にすることが期待できます。

今後も引き続き、ノウハウを共有させていただきます!

マーケティングノウハウをより詳しく学びたい方はこちらもご確認ください!

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